ワーキングメモリ
ワーキングメモリとは、情報を数秒間くらいまでの短い時間オンラインに保ち、処理する能力です。
多くの高度な認知機能(心やあたまの働き)の鍵となり、 問題解決能力、知能、流動性知性と同義です。
例えば…
・読んで理解する、計算をする、相手や文脈に即して会話する、作業に集中する、衝動に対して状況を見て抑制する、いくつもの料理を同時に作ることや電話にでながらメールに目を通すなどのマルチタスク
・最後までの段取りを考えながらひとつひとつの作業をする、多くの諸条件の中で最適な答えを見つけること
知能の核である一般知性のなかでも、記憶に頼らない問題解決能力または流動性知性や、学校の成績とワーキングメモリについてこれまで多くの研究がなされ、強い相関が明らかになっています。
特に注意や集中力とワーキングメモリの相関について従来から多くの研究報告がなされてきました。認知心理学においては、ワーキングメモリの容量をみると、通常群とADHD群でおよそ標準偏差1つ分の差があることが報告されています*。脳科学的に活動部位が重なっている点と、ドーパミンシステムの関与が示されています。
ワーキングメモリは改善できる!
スウェーデン、カロリンスカ大学のクリングバーグ教授をはじめとするコグメド社とメンバーは、以下の命題を検証しました。
1.ワーキングメモリは伸ばすことが出来るか
2.そして向上したワーキングメモリは、知能、問題解決力や集中力など関係する能力や行動・症状に影響を及ぼすか(汎化するか)
このチームは、1999年から2001年まで、脳科学と心理学の知見を結集してトレーニングを開発し、ワーキングメモリの改善と脳のネットワークに起きる変化(可塑的変化)を科学的に証明し、結果は『Nature Neuroscience』*に掲載されました。
さらに、このトレーニングがワーキングメモリの改善とともに、他の認知機能の改善や、不注意や多動など行動・症状面の改善効果があることを科学的・臨床的に証明し、結果は『Journal of the American Academy of Child and Adolescent Psychiatry』*に発表されました。
こうして、クリングバーグ教授らは、ワーキングメモリは伸ばすことが出来るか、知能(一般知性、流動性知性)、問題解決能力や集中力・不注意・多動などへの効果があるかという問いにYESの答えをだしました。
*Westerberg et al. (2004) Child Neuropsychology
*神経科学の学術誌:https://www.nature.com/neuro/
*https://www.jaacap.org/